ホーム > お客様の声 > vol.21 農的暮らしをコンセプトに集まった3軒が新たなコミュニティを育む「内郷の里プロジェクト」

vol.21

「内郷の里プロジェクト」

農的暮らしをコンセプトに集まった
3軒が新たなコミュニティを育む

相模原市緑区(旧相模湖町)/農的暮らし“内郷の里プロジェクト”
企画・施工:創和建設株式会社 設計:池辺潤一

緩やかな南斜面に、一見バラバラに建つ3つの自然住宅。よく見ると、中央にある広場を囲むように建っているのがわかります。

ここは“農的暮らし”がコンセプトの「内郷の里プロジェクト」。3軒目となる「悠の家」が2015年12月に完成し、2013年から始まったプロジェクトはひとまず区切りを迎えました。

しかし「内郷の里プロジェクト」は家が建ったら終わり、ではありません。そこからさらにコミュニティが育まれ、家づくりが人づくりへと繋がっているのです。

そこで今回は、粟の家のH様、悠の家のK様、設計士の池辺潤一さん、そして創和建設・現場監督の原栄一さんにお集まりいただき、家づくりのエピソードと、コミュニティを育みながら農的暮らしを楽しんでいらっしゃる様子を伺いました。

K邸リビング。キッチンカウンター下の棚は、木工が趣味の旦那様の手づくりです。
 

階段下がひそかな収納スペースに。最終的には引き出しにする予定でしたが「このほうがいっぱい収納できて便利なんですよ」と、どうするか悩んでいる様子でした(笑)。

中心性をもって、そこに集う3つの家

創和建設が企画した“畑を中心に据えた家プロジェクト”から始まり“農的暮らし”をコンセプトにした土地のプランニングを考えていったという設計士の池辺さん。3軒の中心をあえて広場として残したのは、池辺さんのアイデアでした。

池辺「うちはうち、じゃなくて“中心性をもって、そこに集う3つの家”という形を前提にしたプロジェクトでした」

最初にここに家を建てたのはH様。3年ほど土地を探していましたがなかなか見つからずにいたとき、この土地を紹介されました。もともと畑をやられていたり、奥様が雑穀料理の料理教室を開催していたりと、農的暮らしの要素が強かったため、コンセプトもすぐにしっくりきたそうです。

H様「住む家を探していたというよりは、暮らし方が先にあって、それに合った家を探していた感じだったと思います。それがこの土地に出会ってようやくピンときた感じでした」

一方K様は、1度お隣の藤野で土地購入を決め、設計図までつくっていました。しかしさまざまな事情で取りやめ、近所に住まいながら改めて土地探しをしていたところ、H邸の建築中にこの土地を見て、ひとめで気に入ってしまったそうです。

K様「文句なしですよね、ここは。南斜面で日当たりも風通しも最高だし、景観も良くて、起きたら目の前に山があるっていう。もう即気に入っちゃいました」

オフグリッド率の高さ=災害に対する強さ

H邸のオフグリッドシステム。施工の際は、ご主人も一緒に屋根に上がって手伝いました

この2軒の特徴は、農的暮らしをコンセプトにしているだけあって、自然エネルギーをふんだんに取り入れ、オフグリット率が高いこと。そして、同じコンセプトで集まったご縁からか、ご近所同士、今も大変仲が良いことです。

H邸もK邸も、それぞれ藤野電力のオフグリッドシステムを採用しています。特にK邸のオフグリッドシステムは規模が大きく、かなりの電力を賄うことができています。たとえば趣味の木工で使う大型の電動工具も、晴れていれば充分オフグリッドシステムからの電力で利用可能なのだそうです。

池辺「この2軒は、電気のオフグリッドだけじゃなく、暮らしすべてにおいて自立した家や暮らしというのがコンセプトとしてありました。だから、やれることはやってインフラと切り離されても成り立つようにっていう考え方がどこかであったような気がします。」

たとえばH様は、お風呂にガスでも薪でも沸かすことができる、最新型(?)の五右衛門風呂を設置しています。大きな薪2、3本でお湯が沸くため経済的にも効率がよく、身体も不思議とよく温まるのだそう。仕事のある平日はガス、週末は薪と使い分けて無理なく楽しんでいます。

「しかし、新築で五右衛門風呂なんて、まずないですよね(笑)」

そのほか、両家とも薪ストーブがあり、K邸には太陽熱温水器もあります。「ここは災害には間違いなく強いね」と池辺さん。「災害になったら、地域の銭湯になりますね(笑)」とK様。地域にオフグリッド住宅があるだけで、これだけ安心感があり、心強く感じるのだな、と思いました。

薪ステーション。まだまだ増えていく予定です。
 

最新型(?)五右衛門風呂。

ご近所同士の繋がりに助けられる日々

K様は最後に家を建て始めましたが、壁塗りは3ヶ月近くかけてほとんどご夫婦で手がけました。その間、お子様は同年代のH様のお子様と一緒に遊んだり、もう1軒の方が夕食をつくってくださったりと、すでにその頃から、ご近所同士の繋がりに助けられていたそうです。子どもたちはそれぞれ違う学校に通っていますが、今では「遊べる日は毎日遊んでる!」というほどすっかり仲良しになりました。

「子ども同士遊んでくれてたから、奥さんも一緒に壁塗りできたんじゃないのかな。私は下町出身なので上の子が下の子を見るのが当たり前だったんですけど、このへんは子どもが少なくて、あんまりそういうのはないんですよね。学校から帰ってきて年齢関係なく遊べるっていいですよね。羨ましいなって思いました」

ご近所の繋がりはそれだけではありません。今回のインタビューには不参加だったもう1軒のお宅はもともと地元の方で、さまざまなネットワークをもっていました。そのおかげで薪の情報がしょっちゅう入ってくるのだそうです。そのうち、3軒ではとてもさばききれない量が手に入るようになり、ついには近所の薪ストーブユーザーを巻き込んで「相模湖薪ステーション」がスタートしました。

現在は7軒が参加していて、木を伐ったり、薪を割る作業を共同で行ないながら、近くに借りた土地に薪を保管し、みんなで使っています。協力し合い、資源を有効に使う、すばらしい地域内循環の輪が生まれていました。

自給自足体験のできる家

今後は、畑を一緒にやるという話もあるのだそう。H様が「●●さんがたかきびに興味をもってやってみたいって言ってるんですよ」と言えば、K様も「よし!やりましょう! でも私は菜園はまったくやったことがないので教えていただかないと」と盛り上がり、すっかりご近所トークに花が咲いています。

また、せっかくの中央広場と各家の特徴を活かして、何かイベントができたらというお話も出始めています。

H様「畑やって、薪割って、木工体験して、雑穀料理つくって、最後は五右衛門風呂に入ってもらうっていう自給自足体験とか、全然できそうだよねって話しています(笑)」

これからも、ますますいろいろなことが始まりそうな「内郷の里プロジェクト」。家とともに、コミュニティもこの地に根を張り、葉を伸ばし始めているのが、確かに感じられました。

2階のバスルームから残り湯を直接洗濯機へと入れられるホースを設置。残り湯の有効利用です。

趣味の木工部屋にて木材のカット。この機械も、藤野電力のオフグリッドシステムで動いています。

大人たちが中でインタビューを受けている間、子どもたちは軒先に出てお話していました。