ホーム > お客様の声 > vol.22 まちをつくるように家をつくる山梨の木が多くのご縁を繋いだ「結びの家」

vol.23

「ありがとうの家」

先祖代々の山から木を伐り出し
多くの関わりの中で育まれた家

山梨県大月市/朝比奈様邸

もはや特別編というより、定番と化してきた座談会(笑)。今回は山梨県大月市に完成した朝比奈様邸の完成見学会で行われた公開座談会を記事化しました。

都留市「結びの家」に続いて、現代の家づくりでは「普通ならばまずありえない」と関係者が口を揃える、究極の地産地消を体現した「ありがとうの家」。関わってくださった多くの方々への感謝の思いから命名されたという「ありがとうの家」に関係者一同が集まり、そのこだわりや家づくりのエピソードを語りました。

座談会に参加した人

  • ■ 朝比奈 誠太郎さん(施主様)
  • ■ 朝比奈 早希恵さん(施主様)
  • ■ 朝比奈 誠さん(施主様のお父様)
  • ■ 桝 麻里さん(建築設計士)
  • ■ 中田 無双さん(北都留森林組合)
  • ■ 小俣 吉仁さん(甲斐東部プレカット工場)
  • ■ 平野 螢一さん(大工・棟梁)
  • ■ 櫻場 淳夫さん(都留市・「結びの家」施主様)
  • ■ 小俣 貴久さん(創和建設・現場監督)
  • ■ 志村 敏夫さん(創和建設・代表取締役)

リビング中央で存在感を放つ大黒柱。大人ひとり、木の後ろに隠れるぐらいの太さがあります。この太さももちろんですが、丸太のまま使うのも珍しいそう

山梨県産材100%、大黒柱は自分で伐り出し

高台にあり、目の前に雄大な富士山を望む、眺望の良い朝比奈様邸。吹き抜けの気持ちいいリビングには大理石で作られているという薪ストーブが置かれ、山梨県上野原市の家具工房studio ye’sによる県産材のダイニングセットが空間を彩ります。窓を開けるとテラスとリビングが一体となって、遠くの富士山まで繋がっているかのよう。

古材利用も積極的に行ない、引き戸には実家の横にあった古家の扉を、玄関には味噌蔵の扉を再利用しました。2階は開放感のあるオープンな間取りで、お子さんの成長に合わせてアレンジが可能。また、収納スペースが多く、デッドスペースを余すところなく利用しているのが印象的でした。

しかし、朝比奈様邸の最大の特徴は、なんといっても建材です。山梨県産材100%というだけでもすごいのですが、リビング中央にそびえる巨大な大黒柱や一部の梁には、朝比奈家で、先祖代々受け継がれてきた山の木を使用しているのです。大黒柱に至っては、施主自ら山に入り、伐り倒すところから行なったのだそう。今は、山を持っていてもその山の木で家を作る人自体がほとんどいません。今回、朝比奈さんの強い熱意と多くの関係者の協力によってその実現に至ったのには、いったいどのような物語があったのでしょうか。

この家づくりが実現するのはすごいこと

座談会の様子。見学会にきたお客さんも楽しそうに聞き入っていました

志村:今日は珍しい家づくりをした朝比奈さんの家が完成したということで、関係者のみなさんに集まっていただきました。朝比奈さんがお父さんと一緒に伐った木が大黒柱になっているんだけれども、本当にそんなことができるのかって最初は思いました。でも山梨にはすごく優秀な方々がいてですね、できるかなって聞いたら「大丈夫だろう」って。

中田:いや、最初は「できないだろう」って言いました(笑)。

(全員笑)

志村:それは聞こえてなかったです、すみません(笑)。えっと訂正すると、できないって言ったらしいんだけど、結果的にはできちゃうんですよ(笑)。創和建設では自然素材100%でつくるのはもう当たり前になってきました。でも今回は地元・山梨の材100%で、しかも先祖代々の山の木を使いたいっていうこだわりがあり、施主伐採もやるという。それが実現するって本当にすごいことなんです。だってそもそも大量生産の材木を使えば安く上がるし、早くできる。それを承知のうえで、ぜひやりたいと言ってくださったんですから。伐採当日に立ち会ったのですが、親子でひいおじいさんの山へ入り、大木を1本ずつ切っている風景を目の当たりにして、「これ、すごすぎるだろう」って、ちょっと武者震いしたのを思い出します。

施主さんの熱意に押されて始まった究極の地産地消

—朝比奈さんはもともと自然住宅をつくりたいと思っていたんですか?

奥様:いえ。じつは木造で建てたいとは思っていたんですけど、自然素材に関しては、創和さんと出会うまでよく知らなかったんですね。ネットで土地探しをしていて不動産屋さんを調べていたら創和建設が出てきて、自然素材を使いますっていうことがいっぱい書いてありました。ほかにも「そよ風」とか地熱利用とか井戸活用とかいろいろ書いてあって。興味が湧いて、電話して話を聞かせてもらったら、志村さんが自然住宅についてすごく語るんですよ(笑)。そのお話が、今まで住宅展示場で聞いていたことと全然違っていて。そこから自分でも本を買って調べたりして、これはすごく大事なことだな、自分の家もできるだけ環境に優しい自然素材で作りたいと思うようになりました。私はもともと大学が社会学部だったので、問題解決的な話が好きなんですよ。当時の住まいは上野原市だったので、近くて相談しやすいというのもありましたね。 —なるほど。そこから「自分で木を伐る」というところまでいっちゃったのはどういう経緯なんですか?

朝比奈:きっかけは薪ストーブですね。もともと薪ストーブは入れるつもりで、薪を調達しなければいけないので、実家の山の木を切り始めていたんです。でも切っているうちに、せっかく山を持っているんだから、家の材にも同じように使えればそれに越したことはないんじゃないかって思うようになったんです。

お父様:息子が、急にチェーンソーを買ったなんて言うからね。薪を切るぐらいだと思ってたけど、まさかここまででかい木を伐ることになるとは思わなかった(笑)。自分もいつか使おうかと思っていたんだけど先を越されちゃって。でも、嬉しかったですね。

—普通なら伐採はプロの方にお任せするものですよね。なぜ施主さん自ら伐ることにしたんですか?

奥様:主人が「自分のチェーンソーで伐りたい」って言ったんです(笑)。

朝比奈:記念になるし、どうしても携わりたいと思いまして(笑)。

中田:でも木を倒すのってものすごく危険な作業なんですね。ましてや素人の施主さんが自分でやるとなると、やっぱり危険なので最初は私たちもお断りしたんです。でも、とにかく施主さんにものすごい熱意があってですね。

—その熱意に押されてやることにしたんですね(笑)。

中田:はい(笑)。本来であれば、ご自分の山の木で家を建てるなんて、こんなにすてきな話はないですから。


 

大変だけど、出来上がったものを見るとやっぱり嬉しい

—小俣さんは結びの家の取材のときに「本当は断りたかった」っていう話をされてましたけど…(笑)。

小俣(吉):今回も同じです(笑)。もうね、ドキドキするんです、創和さんから連絡がくると。

(全員笑)

小俣(吉):でもうちに話がくるときにはみなさんもう、この熱い状況じゃないですか。

(全員笑)

—志村さんと中田さんが、すでに朝比奈さんの熱い思いを受け止めている、と(笑)。

小俣(吉):そうなんですよ。だからもうやるしかない、と(笑)。で、材を乾燥させるのに半年ぐらい製材工場で管理していただいて、いざうちの工場に入ってきたらきたで、今度は従業員たちが「このサイズを本気でやる気か」と(笑)。

(全員笑)

小俣(吉):あと、結びの家もそうだったんですけど、材が全部見えてるんです。これが何も隠せないので大変なんですよ。工場としても緊張しますし、大工さんに引き継いでいくのにご迷惑をかけないようにやらなくてはいけないっていう部分もありますし。だからやっぱり「断りたい!」っていうのは思うんですけど(笑)。

(全員笑)

小俣(吉):でもこうして出来上がったのを見ると嬉しくなっちゃいますよね。これだけ喜んでいただいて、こういう家づくりに携われている僕らはすごく幸せだなと。

中田:普段、我々って山から木を出しますとね、市場に運んでおしまいなんです。で、その木を誰が買ってくれてどこの家に使われたかっていうのはまったくわからないんです。だからこういうふうに顔の見える関係で繋がることができるっていうのは、仕事をやっていてすごく充実しますし、嬉しいですよね。


 

琵琶湖の対岸目指していたら淀川に行っちゃった!?

—設計は桝さんですね。

桝:志村さんからの紹介でやることになったんですけど、当初はまだ創和さんに頼むかどうか決まっていなくて。ほかの工務店さんも候補に入っている段階でお願いされて、創和さんが仕事を取れるか取れないかが私にかかっている、みたいな状態でした(笑)。

(全員笑)

桝:なので、最初にこんな感じでどうでしょうっていうご提案をさせていただいたときがいちばんドキドキしました。でも当初、志村さんや朝比奈さんからお話をお聞きしたときは、自分で木を伐るっていう話はなかったですし、県産材っていう話すらなかったですよね。

朝比奈:なかったですね。当初は。

桝:最初は車を2台入れられるビルトインガレージのある家がいいっていうお話でした。だから、そこからこういう家になったのは私も驚きです(笑)。

志村:県産材は、協力してくれる方々がおられるのでやるべきだしやれると思ってましたけど、こうなるとは私も思わなかったですね。鳥人間コンテストで琵琶湖の対岸目指してたら淀川行っちゃったみたいな。

(全員笑)

志村:仕事が取れる取れないは施主と工務店の相性もあるので、結果としてそうなればいいな〜という感じで...。ただ、今回はとてつもなくすごいところまで行っちゃったなっていう感じですよね。ただ桝さんと朝比奈さんはきっと合うなと思ったんです。

奥様:桝さんが最初に出してくださった案がすごく優しい感じがしていいなと思いました。あと、的確にアドバイスしていただけるし、お話もしやすかったんですよ。それで、桝さんが以前に設計された「命が輝く家」を見させていただいたときに、施主さんの奥さんが、桝さんはいろいろと見てくれるしこちらのこともよく考えてやってくれるからいいですよって推薦していただいて。それで桝さんに決めました。

山で大黒柱に良さそうな木を選んでくれと言われたのは初めて(笑)

平野さんはいかがでしたか? 結びの家に引き続いての現場でしたが。

平野:やっぱり見える部分が多いのが大変ですよねえ。でも創和は左官屋さんや現場監督がしっかりしているので、楽といえば楽なんです。ただ、山に行って木を伐るところからやる家っていうのは、長年、大工をやっててもなかったですよねぇ。工場に行って材を選んでくれって言われることはよくあるんですけど、山まで行って、大黒柱に良さそうな木を選んでくれって言われたのは初めてです(笑)。

(全員笑)

朝比奈:平野棟梁には個人的にすごく勉強させてもらいました。

—なにか作業をお手伝いしたりしたんですか?

平野:たとえば表の焼杉。あれを全部やってくれましたね。

朝比奈:最初は軽い気持ちで記念になるからいいかな、やりますって言ったんですけど、板が届いたらすっごい量で。これは(やるなんて言って)失敗したかなと思いました。

(全員笑)

平野:いちばん暑い季節にバーナーで全部焼いたわけですから。

朝比奈:土日だけじゃとても足りなくて会社の有休も使いました。挙句の果てに平野さんに「朝比奈さん、今日もきてますけど仕事は大丈夫なんですか?」って心配されちゃって(笑)。でも大変な分楽しくて、すごくいい経験ができたっていうのはありますね。

決まった答えはない

—小俣さんは現場監督としてさまざまな家づくりに関わってきたと思いますが、今回の現場はいかがでしたか? 大変だったところは?

小俣(貴):…何が大変かって言われると困っちゃうんだけど、楽だったところはないっていうことは確かですね。

(全員笑)

朝比奈:私たちも結構こだわりがあっていろいろ注文してたんですけど、小俣さんもいろいろこだわりのある方で。たとえば玄関戸の枠があるんですよ。そこが木の素地の色がいいのか、焼杉に合わせた色がいいのかを桝さんと小俣さんでかなり議論していて。私はそれを遠目から見て、ああ、ふたりに頼んでよかったなぁって思いました(笑)。

小俣(貴):つい余計なことを言ってしまうんです。

桝:で、最終的には朝比奈さんが決めてね、と(笑)。

小俣(貴):こういうのって決まった答えはないんですよ。いろいろな意見があっていいと思うし、その人がいちばんいいと思ったものを選べばいいことなんだと思うので。私は選択肢を出しているっていう感じです。

家づくりで人生が変わる。
狩猟免許も取得!いずれは自伐林家も…?

朝比奈:家づくりは始める前に想像していたよりずっと大変でした。でもそれ以上に楽しかったですね。今日の朝、これまでのプロセスを振り返って、楽しかったからこそ没頭してできたんだな、ここまでこられたんだな、としみじみ感じました。木の家って、もうちょっと雨風にさらされたり、日焼けして垢抜けてきた感じがかっこいいと思うので、大事に住んでいきたいなと思います。

—すでに創和の自然住宅に半年間住まわれ、伐採の先駆者でもある櫻場さんはいかがですか?

櫻場:木の家は本当に快適ですね。それまではアパート暮らしだったんですけど、新建材で水を通さない家だったんだなっていうことをすごく実感しています。木の家に住むと、肌に受ける水分の感じが全然違うんですよ。

朝比奈:ええー。それは楽しみ! 僕らもこれからそれを経験していくことになるわけですね。

櫻場:それに創和さんの家づくりって、うちもそうだったんですけど、関係者の方々としっかり関われる家づくりですよね。朝比奈さんもそうだったみたいで、それが「ありがとうの家」という名前になったし、こうして施主同士でも繋がらせてもらって、すごくいいプロセスだなと感じました。山に入った仲間ということで(笑)、今後ともよろしくお願いします。

朝比奈:こちらこそよろしくお願いします(笑)。

お父様:みなさんいろいろとありがとうございました。みなさんのおかげでこんなに立派な家ができました。息子家族の新しい生活が始まるんですけれども、ここからきっと、いい人生が始まると思います。

朝比奈:私は家づくりを通してたくさんの方からいろいろなことを学ばせてもらいました。大工さんの匠の技術であったり、林業に関することも学びました。全部が繋がっているんですよね。最近、私は狩猟もやろうと思いまして。そうすると山の動物のことも繋がっていて。

奥様:狩猟免許も取ったんですよ(笑)。

桝:ええ! それ、初耳です(笑)。

朝比奈:獣害も山の環境が崩れているから起こるわけで。そういう観点からも、地産地消とか山梨の材でやるっていうのはいいことだと思うんですよね。なので、これからも薪はなるべく地元の材を使っていきたいし、せっかく山があるのでいずれは副業として自伐林家もやりたいなと思っているんです。家づくりで学んだことを生かして今後も生活していきたいなと思います。今、そんな思いでいっぱいです。

すべての空間が緩やかにつながった2階部分。子ども部屋となるスペースには本棚や収納もしっかり用意

実家の横の古家にあった戸を、和室の引き戸として再利用。長さが足りない分は木枠を足して同じ色になるよう塗装してもらったそう

玄関からキッチンまで抜けられる通り土間にも収納がいっぱい。靴に食品、庭仕事の道具まで、いろいろなものがしまっておけそうです