ホーム > お客様の声 > vol.29 空間の気持ち良さを大切に。毎日新鮮で、ちっとも飽きない不思議な家「曖昧の家」

vol.29

「曖昧の家」

空間の気持ち良さを大切に。
毎日新鮮で、ちっとも飽きない
不思議な家

八王子市/K様邸
2018年5月竣工 設計:池辺潤一

空間的に気持ちいいと思える家をつくりたい

閑静な住宅街のなか、ご実家のお隣の、少し奥まった立地に建つK様邸。まず目を引くのは、角をすっぱりカットしたように斜めになっている玄関です。中に入ると、これまた斜めになった広い土間と階段を兼ねたリビングのベンチ。吹き抜けの上部には景色を切り取るかのような大きな窓があり、そこから日差しが降り注ぎます。2階には用途が特になさそうな謎の通路や小さな屋根裏スペースも。仕切りはほとんどなく、決して広くはないはずのスペースに大きな空間を生み出しています。

以前は、同じ敷地に建っていた古い家に住んでいたというK様。奥様が自然住宅を手がける工務店に勤めていたこともあり自然素材にはとても詳しく、床を杉の無垢材に張り替えていました。そこで、梅雨時でもベタベタせず、素足で歩いても気持ちがいい無垢材の魅力は体験済み。自分たちで家を建てるならばやっぱり自然素材で、と決めていたそう。そして、できれば近隣の工務店に頼みたいと探していたところ、見つけたのが創和建設でした。

奥様:「会社に問い合わせてみたら、なにしろ建てた家の実物を見るのが大事。見学できる家があるといわれて、すぐに案内していただいたんです。そのときに志村社長が、大きい家じゃなくて、その家族なりの規模のお家があればいいんだっていう話をされていたんですね。その考え方にすごく共感して、もし家を建てるならぜひお任せしたいと思いました」

それが2016年のこと。しかし、手続きの関係で1度は家づくりの話自体がストップ。再び創和建設に相談したときには、それから1年近くが経っていました。そこでK様は改めて、ある家を見る機会がありました。こちらのコーナーにも登場していただいたウェス様のお宅です。

奥様:「中に入ったら、もう“うわー!”ってなって。どうやって使うんだろうっていう余分なスペースがあったりするんですけど、そこがまたゆとりになっていて、すごくいい。私たちが求めてる家は、こういう家なんじゃないかなと思いました。使い勝手の良さではなく、空間的に気持ちいいと思える家。家族のシーンが見えてくるような家。それで社長に相談したら、池辺さんの設計だということで紹介していただいたんです」

想定外だった斜めの玄関にも意味がある

細かい要望はいくつか伝えたものの、基本はとにかく「面白い家」。そして池辺さんから示されたプランは、なんと玄関が斜めになっていたのでした。

奥様:「もう完全に“想定外”でした(笑)。普通は四角のものが斜めにされているし、南側にはベランダがなかったりするし。それでもう、面白いと思って決めました」

この斜めの玄関、ただ単に格好つけの奇をてらってやったわけではなく、ちゃんと理由があってのこと。

池辺:「ここはお隣にご実家があります。その関係で、ちょうど中間あたりの敷地がご実家との共有スペースみたいな感覚がありました。といっても、何かを一緒に使うという意味じゃなく、心理的にお互いが向き合うスペースみたいなことです。それで(実家のほうに向くように)玄関を斜めにしました。それから要望として、内と外をつなぐ要素がほしいと言われていました。家の中、玄関、外のデッキをつなぐ空間をつくるために、斜めにして土間を差し込んだというのもあります。外観的には一見地味なんだけど、しっかりと軒を張り出した中で、玄関がなぜか斜めで、中に入るとすごく動きがある、そんな感じをつくれたらなと考えました。間取りを細かく便利にしすぎないことで、心地いいだけではなくお財布にも優しい家にもなりますし。素材もちゃんとしたもの使いたいし。」

施主の思いに、職人さんが応えてくれる現場

建設中は近くのアパートに仮住まいし、毎日顔を出していたという奥様。「その場その場で細部を決めていく池辺さんのスタイルがすごくよかった」とお話してくれました。通常は工事に入る前にほとんどのことが決まっているものですが、池辺さんの場合はあまりかっちり決めすぎず、タイミングがきたときに、相談して決めていくのです。

奥様:「そのやり方が私たちには合っていました。ある程度形がわかったところで“ここの色はどうしますか?”って聞かれたほうが検討しやすい。それはすごくありがたかったですね」

K様:「やってる途中で、電気屋さんに“こっちのほうがいいんじゃない?”って提案してもらって、スイッチの位置を変えたこともあります。それも、かっちり決まってなかったからできたことだと思います」

ちなみに、普通だったら現場で決めるといっても、話をするのは現場監督とお施主さんと建築士ぐらいのもの。しかし創和建設の現場では、そこに大工さんや電気屋さん、水道屋さんまで、みんなが自主的に、どんどん意見を出すのだそう。みんながプロフェッショナルという自信と、現場に自由な空気が流れている。木造の住宅現場に現場監督が常駐していることも原因かもしれません。

池辺:「しかも職人さんにとって都合のいいことを言うのではなく、建主さんの思いに対して、だったらこうしたほうがいいんじゃないかと、建て主さんの要望に被せてくるんです。それ言っちゃったらここやり直さないといけないけどいいんですか、みたいなことを大工さんをはじめ電気屋さんや水道屋さんが自ら言ってくる(笑)。でもそうやって、職人さんたちがひとつのものをつくりあげると、やっぱりいいものができるんですよね」

そんな職人さんの心意気が感じられるエピソードがあります。K様邸のダイニングテーブルは、じつは旦那様のおばあちゃんが使っていた座卓をリメイクしたもの。昔ながらの表面がツルツルした座卓でしたが、捨てるのも忍びなく、なんとか生かせないかと相談したところ、塗装の職人さんが表面の塗装をきれいに削ってくれたのです。

奥様:「重たいので運ぶだけでも大変ですし、かなり削ってもらったので、実際、作業もものすごく大変だったみたいです。でも気持ちよく引き受けてくださって、最後には「楽しい仕事をありがとうございます!」って言われたんです。「こういう仕事大好きなんです」って。物をつくるっていう気概をもった本来の職人さんが、創和建設にはホントに多いんじゃないかなとすごく感じています」

住み始めてからも「まったく飽きない」

こうして無事完成したのが2018年5月。住み始めてだいぶ経ちましたが、いまだに「毎日新鮮」だと言います。

奥様:「カーテンを開けるのが楽しいですね。朝、最初に起きた人がロールスクリーンをあげにいくんですけど、天気によって雰囲気が全然変わるんです。椅子の位置を変えたらすごく気持ちがよかったとか、山の見え方がここからだとすごくきれいだとか、まだまだ発見があります」

K様:「まったく飽きないですね。昼と夜でも雰囲気が変わります。区切ってないからいろいろなことができるのもよかったなぁと思います」

思わず惑わされてしまう不思議な空間だけれど、そのつくりはじつはシンプル。それなのに、毎日新鮮でちっとも飽きない。やっぱりちょっと、不思議な家であることに変わりはなさそうです。「ひとつひとつ大事なものを増やしていきたい」という奥様。その不思議な空間に、どんな日常が足され、魅力を増していくのでしょうか。

創和建設は、ほんとにたくさんの建築家・設計士とのコラボが多い。創和にも設計部があって1級建築士がたくさんいるのに、なんで?それって凄く面倒じゃないの?と私たちは思ってしまうのですが、創和建設代表の志村さんにインタビューの後で聞いてみると答えはいつもと同じ。

「うちで設計したら、同じような家しかできないんだよね。設計する人の癖というか好きな家ってそう変わらないから。それだと、設計するときに無理しないから作りやすくはあるんだけど“また、同じような家だな~”って、自分たちがぜんぜん楽しくないんだよね。今回の“八王子の家”も、池辺さんに設計をしていただいたことで家の中に想像もしていなかった新しい空間というか風景が見えてきて、他の建築家だったらそれはそれでまた違った素晴らしい景色が見えてくるんだけれど…それぞれの施主さんにはそれぞれの色があって、建築家の方も同様みなさんそれぞれ強烈な個性があって工務店設計部では考えられないちょっとの無責任さもあって(笑)、そこにうちが加わることで毎回刺激を受けながら仕事をしていける。担当する監督はじめ現場の人たちはいい迷惑かもしれないが、確実にスキルのアップにもなっているし…。設計って、家づくりでは一番大切なモノで、コストとスピード優先でとにかく会社のことだけを考える工務店の自社設計というやりかたは、そんなに正しくないような気がするんだよね。設計と施工は基本は分離、それがいい家をつくる第一歩。施主さんにとっては設計料も余分かかるし、家によっては施工に時間もかかるし、いいことばかりではないかもしれないですけど、その恩恵・見返りはとてつもなく大きいですよ。」

そして志村さん最後に「住まい手によって、誰でも合うわけじゃないいだけど、この“曖昧の家”って暮らし方がぜんぜんわからないでしょう?」と一言、とっても嬉しそうでした。

この家づくりに主に関わった、施主・設計・施工の3者から全く同じ言葉「楽しい」が何度も、そういえば設計や現場納まりの打合せの時に、創和の家は「それ、楽しそう、面白そう!」という言葉が飛び交うらしいということを以前から聞いています。こういうことなんですね。「大事なものをこれから足していく」という奥様の言葉通り、じつに“創造的で楽しい”住まいでした。